[SDGs x Arts|Semester Research Residence Program 2025 Tokyo] モナッシュ x ロンドン芸大 x 東京藝大

日程
2025年1月17日 – 2月13日 (インターン+フィールドリサーチフェーズ)

 

開催場所
東京藝術大学(上野、取手)
各所 (千葉、広島、新潟、群馬)

 

参加教員
江上賢一郎 (東京藝術大学 グローバルサポートセンター 特任助教)
宮内芽依 (東京藝術大学 グローバルサポートセンター 特任助手)
加藤康司 (東京藝術大学 グローバルサポートセンター スタッフ)

 

学生
カラム・マクグラス (モナッシュ大学 博士過程・美術)
アンジェラ・マッキントッシュ (ロンドン芸術大学 博士過程)

 

リサーチサポート
渡邉元貴 (東京藝術大学 大学院美術研究科 グローバルアートプラクティス専攻)
ジョージア・サグリ (アーティスト)
原田恵 (東京リサーチ 記録)
友久幸子 (広島リサーチ)
宮内五月(群馬リサーチ)

 

リサーチ先
小さな地球 (千葉)
越後妻有の冬 2025 (新潟)
高崎市染料植物園、富岡製糸場 (群馬)
平和記念公園、市営基町高層アパート (広島)

 

約1か月間、モナッシュ大学とロンドン芸術大学の博士課程学生2名を迎え、リサーチ・レジデンスプログラムを実施しました。今回の滞在では、それぞれの研究テーマに沿いながら日本における地域社会や文化的実践を深く理解することを目的に、フィールドリサーチを中心とした活動を行いました。

カラム・マクグラスは、クィアやコミュニティ、政治とメディアの関係を主な研究テーマとしており、日本滞在中は「記憶と政治性」という視点から都市空間や公共施設における記憶の扱われ方を探求しました。特に広島でのフィールドワークでは、平和記念公園や平和祈念資料館を訪れ、戦争体験の継承やその記憶がどのように都市景観に組み込まれているのかを調査しました。また、戦後復興を象徴する基町アパートなども訪れ、都市再生の過程に見られる社会的・政治的側面にも注目しました。

一方、アンジェラ・マッキントッシュは、アーティストと地域社会、自然環境や工芸の関わりに関心を持ち、千葉や新潟、群馬でリサーチを行いました。千葉県鴨川市の棚田では農作業と都会の人々関係の育み方について学び、新潟県の越後妻有地域では、冬の雪深い環境の中で地域の女性たちが行うアート活動や生活文化に触れ、アートが地域コミュニティにおいてどのように機能しているかを観察しました。さらに群馬県の公立染料植物園では、藍染をはじめとする染料植物の育成や伝統的染色文化の継承に関する調査を行い、人と自然、技術と文化の関係性を探りました。

それぞれのリサーチは、あらかじめ定めた計画に基づくものではなく、滞在を通じた出会いや体験を重ねる中で柔軟に方向性を見出していく形で進められました。現地での偶発的な出会いや地域の人々との交流を通じて、両名は自身の研究テーマを日本の文脈に重ね合わせ、新たな視点や問いを得ることができました。今回のプログラムは、成果物を目的とするものではなく、むしろこうした過程そのものを重視するリサーチ・レジデンスとして、今後の国際的なアートリサーチの展開にも示唆を与える内容となりました。