Creative Appropriation of Contested Spaces: Arts and Heritage from a Social Justice Perspective[8/11〜15/オンライン][8/18〜29/アムステルダム]

2025/10/20 サマースクールレポート

1325907 美術研究科壁画第一研究室博士1年 松下七菜 

 

① タイトル・基本情報

  • プログラム名:Creative Appropriation of Contested Spaces: Arts and Heritage from a Social Justice Perspective
  • 会期・場所(都市/会場名)

2025年8月11日〜29日・アムステルダム|マリネトレイン

  • 主催機関(大学・財団など):ZHK

 

② 参加目的

応募動機:歴史的な場所の記憶をどう扱うかという問いが、歴史教育や歴史認識を捉え直したいという自分のテーマと直接関わっていたため。

自分の研究との繋がり:マリネトレインは元海軍基地として使われており、再開発が行われた今も、軍の施設に囲まれている。日本以外の国で人々が平和と軍の存在についてどう考えるのかを垣間見ることができた。

 

③ プログラム内容

  • ワークショップや講義のテーマ:最初は先生方が行ったプロジェクトや社会に参加の際の心構え、都市の歴史を学んだ。後半ではランダムにグループを組み、(その後もグループを自由に移動変更、個人制作可)最終日に公開プレゼン。
  • グループワーク/制作活動の概要

最終的に4人のグループで発表を行った。タイトル:「Play and Pray」

折り紙を使ったワークショプ。折り紙の船に願いを書き運河に流すプロジェクトと、軍施設のフェンスに折り紙の紙飛行機をひっかけるプロジェクトの二つ。その過程でさまざまな人に折り紙を追ってもらいマリネトレインの印象などについて話す。

  • 特に印象的だった体験:

1.「タイムラインワークショップ」付箋を3枚×3セット選ぶ。それぞれ①自分についての出来事で最も大事だと思う年(自分が生まれる前やずっと後でも可)②その年のディティール③その年に起きた世界的なトピック を記入し、最後に10mほどの長い年表に貼り付けて完成。個々がどんな歴史を辿ってきているのか、何を大切にしてきたのかを窺い知ることができた。中には、自分の国の悲しい歴史と今を語り泣いてしまう人も見られた。戦争や紛争が人々へ残す影響は、日本にいるとなかなか触れることがない。彼らの話から国の争いが何代もの人々の生き方に直接に影響を与え続けるのだと感じた。

2.「毎日のエクササイズ」1日のレクチャーは、みんなで行うミニエクササイズから始まる。毎日別の人が簡単なエクササイズを考えてみんなで実行する。

外に出て体を動かしたり、深呼吸したり歌を歌ったりした。大切な時間だったと思う。

 

④ 成果・学び

  • 得られた知識やスキル:英語での議論スキルや会話、社会と関わる際の心構え オランダの人々の平和観
  • 国際的な交流の経験:メンバーに英語ネイティブは少なかったが、ほとんどのメンバーがスラングを使い流暢に話していた。ついて行こうとしたが、日常会話でやっと。議論になると一般的な言い方や細かい感情の表し方を知らずうまく伝わらない、聞き取れないストレスが日に日に大きくなっていった。
  • 制作や研究への新視点:先生と学生どちらも、誰かが話し始めるのをじっと待つ。1人の意見を大切にしていると感じた。

 

⑤ 今後の展望

  • 自分の研究制作にどう応用するか:自身の出自をきっかけに、自分ごととして植民地主義の歴史の二面性に目を向ける人が多い。日本でも実践できるはずだ。スリランカ出身のメンバーが「Neo colonialism」と発言。自分と近しい言説を持っている人がいることで勇気付けられた。
  • 継続的に取り組みたいテーマ:脱植民地主義とネオ植民地主義

 

⑥ 写真・画像

  • グループ作業や作品、会場の様子など

アムステルダムの風景 街に運河が流れている

活動したカルチャークラブのすぐそばにある、海洋ミュージアムと展示された船

グループのイメージボード

毎日英語でつけていた日記

身体を使ったり、思考を可視化したりするワークショップが印象的だった

毎日みんなで食材を持ち寄ってランチ。

折り紙で作った飛行機と舟。この街へ人々の願いが書き込まれている。

飛行機設置の様子。

軍用施設のフェンスに紙飛行機を貼り付けた様子。

最終日のセレモニーにて、みんなで願いを込めて舟を運河に流す様子。

 

⑦まとめ

今サマースクールでは、日常会話英語に留まらない議論での英語を経験できた。

その一方で会話を聞き取れないことや理解できないことが数多くあり、メンバーに迷惑をかけてしまった。辛抱強く私との会話に向き合ってくれた皆に感謝している。

今回は、「歴史的な記憶を持つ場所について」というテーマを元に、Marineterreinで過ごした。

この地域は海軍の歴史を持っている一方で、人々の憩いの場所へと意味を変化させてきた。海軍養成施設に所属する若い男性に、軍隊についてインタビューした時、「海軍の主な目的は東からの脅威から国民を守ることで、社会にとって良い影響を与えていると思う」と話してくれた。

また、授業外の時間には台湾や香港、マカオなどからきたメンバーと話をすることが多かった。先の戦争について、日本では話さないトピックについて深く話したり、自国の教育を振り返ったりする時間は貴重だった。

その時改めて、何か答えを出すことが主の目的ではなく対話を続けることやその過程が大切なのだと強く思った。