GAPインドネシアユニット [8月10日〜24日]

GAPユニットプログラムで訪れたインドネシア、ジョグジャカルタのレポート

澤田詩園

 

グローバルアートプラクティス専攻のユニットプログラムで、インドネシアにて3週間の研修に参加した。スラウェシ島のマカッサルを拠点とするRiwanua、ジャワ島のGudskul、モナシュ大学、そしてジャワ島、ジョグジャカルタのTempat Kitaにそれぞれ約7日ずつ滞在した。

今回の研修において、自身のテーマとして設定した研究テーマが「新しい集まり方」。インドネシアには多くの民族からなる文化と、そこに根付く意識から発生した多数のアートコレクティブが存在する。この旅ではRiwanua、Gudskul、Tempat Kitaという3つのコレクティブにて研修とアクティビティを行った。この3拠点に共通して、メンバーによる活動の紹介と、現地の他のコレクティブとの交流の機会が与えられた。その内容は多岐に渡り、現地文化理解への助けとなった。私は通常のユニット参加の日程に加えて、アディショナルプログラムであるジョグジャカルタでの7日間を過ごしたことから、このプログラムについて特にレポートしたい。私たちがジャカルタからジョグジャカルタへ移動したのは、8月17日だった。この日はインドネシアの独立記念日で、滞在していた宿も観光地もテレビ番組もお祝いムードであった。ジョグジャカルタで訪れたPG Madukismoという砂糖工場、Fort Vredeburg Museumという博物館で日本とオランダによる占領時代、そして独立闘争について学ぶことができた。占領された歴史を持つ砂糖工場が今も残り、地域や王宮との関係を実際に見たことで、占領時代が今につながる歴史であるということを実感した。

個人的に印象的だった文化が2つある。ひとつは、王宮で見た影絵。まず、地下マーケットのオーダーメイド刺繍ショップで強烈に良いモチーフを見た。その後、砂糖工場の壁でも同じ絵を見、Art Jogの作品モチーフでも出会った。全て横を向いた人型の図であるのは、影絵から派生したデザインだと徐々に理解した。それはワヤン・クリといい、ジャワ島やバリ島で行われる、水牛の革で作られた人形を使った伝統的な影絵芝居である。古代インドの叙事詩を題材にしている。この公演中に奏でられる伝統音楽「ガムラン」の王宮奏者に散歩中偶然に出会い、王宮の周辺を案内してもらうなど、不思議な出会いもあった。

もうひとつが砂糖工場で聞いた考え方である。近くに水辺があるわけでもないのに、工場の中を小さな蟹が歩いていた。私たちはその場でうろつく蟹を外に出そうというか、少しかまいたいような気がして近くで見ていた。案内をしていただいた工場の方に、「ほっておきなさい」と注意された。サトウキビを使い砂糖を作る、工場を稼働させる際に行う儀式があるらしい。「自然から砂糖を作るけど、必要以上のことはしないのでそっとしておいてください」と、神(自然)に対してお願いするというような話だった。正確な意味はわからないが、ジャワ神秘主義的な考え方であるということだった。日本や自分が育った北海道にも似た考え方があるなと、工場内に聳え立つ巨木を前にして思い出していた。

ワヤン・クリもジャワ神秘主義も、現在も地域に根付き共有されている物語である。政治に対して生活するために連帯することが必然であったこの土地においての共有できる物語の役割を考える。アートコレクティブが集まること、そしてこの形が世界に認知され当たり前となった現在において次にするべきことは何なのか。

個人的な興味のレポートであって、留学レポートで求められることとは少し違うかもしれないが、私たちが海外滞在に求めることはごく個人的な興味と重なる、次の制作へのヒントだろう。私はそれを見つけることができた。

ジョグジャカルタで見た施設、訪れたコレクティブ、個人的に見た影絵などはすべてTempat Kitaの北澤潤さんの紹介によるものです。ジョグジャカルタでコレクティブを始め場所を作っていったお話を聞き、制作の現場を見せていただいたことは自身の活動に新鮮な衝撃を与えました。貴重な出会いと学びの場をつくってくださった北澤さん、またご支援くださった関係者の皆さまに感謝いたします。