traceroute — Practices in Telematic Performances[8/25〜9/3/シンガポール、台北、チューリッヒ]

【Shared Campus サマースクールプログラム体験記】

参加プログラム

traceroute — Practices in Telematic Performances

参加日程

2025年8月25日−9月3日(10日間)

参加形式

現地参加(スイス・チューリッヒ)

氏名

石田 満理佳

所属

東京藝術大学大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻 修士課程

プログラム概要 https://shared-campus.com/

“traceroute — Practices in Telematic Performances” は、チューリッヒ、シンガポール、台北を拠点に同時開催される10日間のパフォーミングアーツ・サマースクールです。多様な背景を持つ学生が集まり、最終的にテレマティック・パフォーマンスを三都市同時に上演することを目指します。

第5回となる今回は、インターネットの用語“traceroute”をテーマに、情報やデータが一方から他方へ辿るユニークな経路を、どのようにアーティスティックに「痕跡」として残せるかを探求しました。過去のサマースクールで「Teletopia」と呼ばれたユニークな“第3の空間”は、参加者が遠隔で協働するためのプラットフォームであると同時に、作品を成立させる舞台であり、メディアであり、コンセプトそのものでもあります。

学生は三拠点のいずれかの大学に所属し、チューリッヒ芸術大学が開発したリアルタイムの映像・音響ツールを用いて、毎日4時間のオンラインセッションで結びつきます。加えて4時間のオフラインワークショップでは、即興、スコアリング、演出、振付、ライブビジュアルなど多彩な方法を学びました。参加対象はパフォーミングアーツに限らず全ての芸術分野から広く開かれており、舞台に立ち、他者と協働する意欲を持つことが求められます。

体験記

今回参加した「traceroute — Practices in Telematic Performances」は、テレマティック・パフォーマンスをテーマに、オンラインを中心に実験や上演を行うプログラムでした。

参加者はアートや音楽だけでなく、本当に多様な分野から集まっていて、最初の自己紹介プレゼンからすでに刺激的でした。私はダンスやムーブメントを主に行いましたが、「テクニックがある/ない」に関係なく身体をどう扱うかを考える場面が多くて、即興的に「動かないこと」「影響されることを待つこと」まで表現として扱えたのは新しい発見でした。また、バックグラウンド関係なしに様々な機材のレクチャーなどもあり、テーマに合わせてやってみたいヴィジュアルエフェクトなどを上演に取り入れたりもしました。

今回はインターネット用語がテーマであったこともあり、チューリッヒ芸大のサーバールームを見学したり、チューリッヒのインターネット会社を2社訪れ、サーバールームやレクチャーを受けたことも貴重な機会でした。

印象に残っているのは、オンライン/オフラインでの即興についての議論です。例えば普通なら「トラブル、故障」ですが、ここではむしろ「グリッチ」として作品に取り込める面白さがあって、オンラインならではの偶然性に支えられた表現の可能性を感じました。そのノイズを試してみるワークショップも印象に残っています。

スイスは時差的に9時から13時までオンラインセッションで台北、シンガポールとワークショップがあり、午後からローカルセッションでした。同時期にパフォーミングアーツフェスティバルのZürcher Theater Spektakel(https://www.theaterspektakel.ch/)やチューリッヒデザイン美術館で新しい展示がキックオフのタイミングでオープニングに参加したりなど、授業以外にも学びが得られる機会があり、充実したプログラムでした。

グループ制作では、日本語を書いてみたり、ロシア語、ドイツ語、中国語をしゃべってみたり、日常的なジェスチャーを取り入れたりしながら、それぞれのバックグラウンドを繋げていきました。また、ワークショップごとにフィードバックを求められることが多く、即興的な言語化には毎度かなり緊張しましたが、他のメンバーが自然にフォローしてくれて、言葉を超えた連帯感を実感できたのも忘れられません。公開上演を2回行ったこともあり、緊張感を持ちながら制作ができました。

私にとって、このプログラムは「身体と写真」といった自分のこれまでのテーマを、オンライン/オフラインの“間”にどう拡張できるかを考えるきっかけになりました。弱さや不完全さ、偶然をそのまま受け止めて表現に変える、相手にきっかけを作る、そこから作り上げる、ヴィジュアル、ムーブメント、音楽としてもオンライン/オフラインでも同じフィールドで互いに影響し合うそんな感覚を大事にしながら、修了制作に何か活かせればと思いました。

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